96秋の季語(農林)
「読んでわかる俳句日本の歳時記 秋」小学館を読み進めていくと、田舎で暮らす父と母を思いました。
時候、天文、地理、植物、動物、生活、行事の7部のなかの生活を開くと、稲に関するものが多数。
これを全部するには骨がおれます。
生活の中でも農林に関するものを紹介します。
- 案山子
水落ちて細脛(ほそはぎ)高きかがし哉(かな) 無村
膝(ひざ)からくるぶしまでを脛(はぎ、すね)といいます。
収穫前には、作業しやすいように、田んぼの水を抜くんですね。足の細い木でできたカカシが思い浮かびます。
このように、歳時記には季語の説明と有名な俳人の句が載っています。
父は、かかしではなく、鹿威し(ししおどし)を作っていました。竹がカンという奴です。
これも、添水、そうずという季語です。
- 稲刈り、稲干す
母は、稲を干すことをはぜかけといいます。
稲架(はさ、はざ、はせ、はぜ、はで)という稲を干す木組みには呼称が多いです。
- 籾(もみ)、新藁(しんわら)
- 夜庭(よにわ)
庭とは、土間のことで、古民家は、玄関から台所まで靴のままで入れるスペースがあり、そこで、籾すり、俵編み、わらじづくりが行われたそうです。
- 綿取(わたとり)
綿の部分と種とを寄り分けます。
- 竹きる
竹林の竹は、番傘をさして通れるほどに苅るのがよい
と祖父より伝え聞いたとコメントがあります。
よい竹林からは、よい竹の子が生えるそうです。
- 種取り
あさがおや、コスモスなど育てた花の種を採取、乾燥させ、花の名前を書いた袋に保存したそうです。
- 菜種・大根蒔く
- 薬掘る
くすりも自家採取とは、時給自足の想像を遥かに超えています。
- 豆ひく、大豆干す
- 胡麻苅る
などなど。
新しい大豆からできる新豆腐も秋の季語。農林は生活、食事に直結し、茅(かや)を刈って、屋根を葺いたり、障子をいれたり、冬支度も秋が深まる前にやっておきたいものだそうです。
こうして、歌の題材になる季語を読んでいると、日本最古の歌集、万葉集について、園芸書としても大変貴重なものだというのは、やはり、歌には人々の生活が滲み出るからでしょう。
ここまでお読み頂きありがとうございました。