初蝶や武蔵運びし潮寄せ来(春)道春
初蝶や武蔵運びし潮寄せ来
はつちょうや
むさしはこびし
しおよせき
道春
武蔵国(むさしのくに)という地名は、現在の東京都、一部の埼玉、一部の神奈川を含む領域に相当するそうですが、潮が運ぶというのは合点いきません。もしかしたら、武蔵国から名前をとった軍艦「武蔵」のことかもしれません。軍艦の名前には、旧国名をつけることが多く、戦艦「長門」以外は、終戦時、航行できる戦艦はなかったといいます。終戦後も、祖父は海にしずんだ船のことを考えていたんですね。
荒壁に張り付く蝶の深眠る
あらかべに
はりつくちょうの
ふかねむる
道春
張り付くというと蛾(が)のような不気味な雰囲気が漂っていますが、深く眠って起きてこないところをみると、可哀想な気もします。
春の音運ぶボンベの触れ合える
はるのおと
はこぶぼんべの
ふれあえる
道春
祖父の自信作で、赤い〇がついていました。
ガス管が通っていない田舎では、空になるガスのボンベをころころ転がして取り替えてもらいます。私もよく転がっていかないように、運べるもんだと作業員さんを見ていますが、祖父も見ていたのではないでしょうか。
初蝶や一族寄れる公卿墓
はつちょうや
いちぞくよれる
くぎょうはか
道春
もとは、天皇、または朝廷を公家(こうけ・おおやけ)と指していましたが、
鎌倉時代以降、武力で天皇に仕える武家に対する言葉として、ほかの宮廷貴族を公家(くげ)と呼ぶようになったとあります。さらに公家の中でも、位の高い役職を公卿(くぎょう)と呼び、中国王朝の行政にならったそうです。太政官制という太政官が一番偉い制度は1885年内閣制度が発足するまで続き、世襲のつづく血の濃ゆい世界を感じました。