感想 「ナースのための話し方教室」 著者 小六英介 日本看護協会出版社
わたしは、ナースではありません。
最初にことわっておく必要は特段ないのですが
話し言葉の研究をしていた著者の小六英介(ころくえいすけ)さんも
ナースの立場ではなく患者の立場から書かれているので
とても読み易い本でした。
「医療の根幹には3つの要素がある。剣、草、ことばだ。」という古代ギリシャの医師の言葉を引用し、メスやくすり、そして人のことばが患者の治療に大切だといいます。
時に、ドクターの言葉をかみ砕いて患者や家族へ説明したり、
注意して見てもらいたい事象を別のナースへ伝えたり、他部門とのカンファレンス(会議)の進め方についてなどいろんな場面を想定して書かれています。
飛び抜けてうまくなくともよいのです。上手に話すのではなく、心に届くように説明することが大切なのです。(作中より引用)
若いナースを想定した教則本ですが、自分にとっても勉強になりましたし、励まされました。
かいつまんでお話させていただくと、
日本語というのがそもそも、「一を聞いて十を知る」ようなところがあり、省略しても相手が察して話が進行することが多く、くどくど説明するのが野暮だという価値感があるそうです。その典型が俳句で
わずか十七音字で眼前の事象を描写し、ワビ・サビといった境地まで覚(さと)らせるのです。その俳句に接した人の言語感覚や理解度に、大きくまかせられていると言えるでしょう。(作中より引用)
筆者は、俳句を例にしたからといって、俳句が嫌いというわけではないと付け加えていました。それは良かった。
自分の言わんとしていることを相手に伝えるには、自分の見てきた絵を、誤りなく別の人に書かせることに似ているそうです。
どんな顔の人の絵か、笑っている顔、泣いている顔あります。
「すぐに書かずにまず聞いてください。今から人の顔をかきます」とまずお願いするところからはじまります。
①まず輪郭から、
「丸顔です。」
②それから、部分へ、
「目は丸です。鼻は四角で、口は漢数字の4。
耳は算用数字の3で、左耳は左右反転していること。
耳の位置は目の高さです。」
③しめくくり、
「人の顔の絵の説明を終わります。」
人の顔というよりロボットのような顔のできあがりです。
はなしの筋道もそれとおなじく、結論からはじまり、今の時点での結論でもいいし、それから具体的な事柄、そして要約、ポイントを繰り返すというお話でした。
滑舌をよくする母音のトレーニング方法、息が足りないから語尾が消える、5メートル前方に息を吐く、ワンセンテンス5秒。舌を下の前歯に少しつけてサシスセソ、舌がベタっと上あごにつくとダ行音と混濁するため、タ行音は、上あごをツンと軽くたたくつもりでなど色々テクニックがあり、薄い冊子ながら読み応え十分でした。
ここまでおよみいただきありがとうございます。